暑中見舞いの歴史
SNSの発達とともに、年賀状や暑中見舞いというような、昔からの季節のご挨拶から遠ざかる人が増えてきました。 それでもこれらの季節の挨拶状は、まだまだ根強く残っている日本の文化に変わりなく、それぞれ特別にくじ付きはがきが発行されます。 「お年玉くじ付き年賀はがき」と「かもめ~る」です。
この記事では、歴史の長~い暑中見舞いについてお話しします。
1.「暑中見舞い」は心温まる季節の挨拶の習慣
「暑中見舞い」とは、正月の年始の挨拶と同じように、お盆周辺の暑い季節に大切な人を気遣う挨拶の習慣でした。
本来はどんなに遠方でも手紙ではなく、相手の元気な様子を実際に見に伺うのが通例でした。これを「季節の挨拶」といいます。
そういった「季節の挨拶」は、今よりずっと昔から、毎年、お正月とお盆周辺の2回に分けてその季節の行事のように行われていました。
この季節のご挨拶の起源は、夏のお伺いよりも年賀の挨拶の方が少し早く始まります。
年賀の挨拶の始まりは、なんと大化の改新の翌年(大化2年:646年)にまで遡り、、帝が家臣たちから新年の祝賀を受ける「朝賀」という行事が起源だといわれています。
そしてこの高貴な人々の習慣に憧れ、下々の人たちもその習慣を真似するようになります。
こうして、日頃お世話になっている人や大切な人、親族の家々を回り、昨年お世話になった感謝の気持ちを込めて、「今年もよろしくお願いします」と伝える、新年の挨拶が広まっていきました。
年賀に引き続き、お盆の時期には暑中見舞いの挨拶の習慣が広まりました。
これは、亡くなった先祖を偲びつつ、故郷の大切な人々に対し暑気伺いを行ったことが始まりです。
お盆に帰省したとき「毎日暑いですね。お元気でしたか?」
お盆の帰省前に、近所のお世話になった方々へ「毎日暑いですね。お互い暑い夏を乗り切りましょうね。今から里に帰るので……~」と挨拶をするといった具合です。
また親族やご近所でなくても、お世話になった人には感謝の気持ちを込めて「少しでも涼しい夏を」と手土産を持って挨拶に伺いもしました。
「あの方はお元気かしら」そんな思いから「暑中お見舞い申し上げます」の言葉が生まれたのです。
2.季節の挨拶の習慣から始まった書簡の挨拶
そうはいっても、交通手段が整っていない昔時代や、交通手段が高額だった時代には、遠方の人方へはそう頻繁に会いに行くことはができません。
それでもは、せめて気持ちだけは届けたい。「こちらも元気にしてますよ」という様子を知らせたい。
そんな気持ちから、江戸時代には書簡を送り合う風習が生まれました。
風流人の間では、飛脚を使った挨拶状が飛び交ったとか。
しかしながら、まだまだ庶民には一般的ではありませんでした。
3.官製はがきの誕生で季節の挨拶の書簡(年賀状につづき暑中見舞い)が一気に広まった!
明治維新により、様々な制度が次々と整えられるようになりました。
季節の挨拶状ついても、明治4年に郵便制度が創設されたことにより、飛脚よりもずっと簡単に遠く離れた人へ書簡が送れるようになりました。
その2年後(明治6年)には、書簡に比べて格安の官製はがきの販売が開始されました。
誰にでも内容が見られるというデメリットはあるものの、安価なはがきは庶民に喜ばれるものでした。
プライバシーなんてほぼないといっても良い時代です。
郵便屋さんもご近所のひとり。家の中の表面的なことはほとんどご近所に知られているといっても過言ではない時代です。そんな時代だから、はがきのデメリットにも、大きな抵抗はなかったのでしょう。
明治20年に年賀状が一足早く庶民に流通し、暑中見舞いのはがきが一般的になったのは大正時代に入ってからだとわれています。
4.年賀郵便制度についで夏の挨拶(暑中見舞い)の制度も
現代の年賀郵便制度が整ったのは明治32年ですが、現代のようなお年玉付年賀状が始まったのは昭和24年、戦後のことでした。
そしてお年玉付年賀状から遅れること半年の昭和25年。プレゼント付の暑中見舞いの「かもめ~る」のサービスが始まりました。
このお年玉付年賀状やプレゼント付のかもめ~るは、大変な人気を博し、遠方の人だけでなく、日頃顔を合せる身近な人にも送られるようになります。
当選番号が「当たった!」「外れた」、そんなワクワク感を送り合う習慣は、日本の「おもてなし」の心の表れようにも思います。
5.ウィズコロナで会えない大切な人へこころをこめて暑中見舞いを送ろう
SNSの発達で、手紙やはがきのような、文字を書く習慣や、相手に届くまでの時間と返信を待つ時間との「ときの流れを楽しむ」という風習が薄れつつあります。
また、手紙と縁遠くなったためか、季節にちなんだ「時候の挨拶」や「結びの言葉」といった手紙のマナーも参考文献を見ながら書くのがやっとという人も多いのではないでしょうか。
インターネットの普及で、できる限り早く即答を行う「即レス」、が一般化し、合理主義に全てが染まりつつあります。
ビジネスシーンにおいても、会社や世代によっては挨拶回りを時間の無駄だと考える人も増え始めました。相手の趣向を考えて、手土産を悩む時間さえ勿体ないという人もいます。
それでも、ウィズコロナの時代に突入した今だからこそ、あえて非合理的とも思える暑中見舞いを出してみてはいかがでしょうか。
この夏は帰省できない方々が数多くいます。故郷の大切な方へ、そして故郷を思い帰省しないと判断した人へ、あなただけの手書きの文字を一言添えて暑中見舞い
を出してみませんか。
きっとその暑中見舞いを受け取った人には、夏とまごころも一緒に届けられるはずです。
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