年賀状は新年の祝いが書き添えられ、新年に届くように送られる挨拶状です。
SNSの普及により、2003年をピークに年々送付数が減少している年賀状ですが、まだまだお正月の風物詩の代表は譲れません。
親戚や、友人、仕事で関わりのある方など、お世話になった人への感謝と引き続きの友好の気持ちを込めて送られる年賀状は手元に届くと嬉しいものです。
今回はそんな年賀状についてのお話です。
■年始の挨拶回り
年賀状の歴史を紐解くには、まず
「年始の挨拶回り」の風習を知らなくてはなりません。
現在でも、お正月に親戚一同集まって「あけましておめでとう」を言い合うのが恒例行事という方も多いのではないでしょうか。
この「年始の挨拶」の歴史は古く、
大化2年(646年。なんと大化の改新の翌年です!)には「朝賀」という行事が行われていた記録があります。
朝賀とは元旦に、帝が家臣から祝賀を受ける行事です。「朝拝」や「みかどおがみ」とも言われました。
行事の名前そのままに、政治や祭祀の頂点にあった天皇へ拝謁し、新年の祝賀を述べることが一年の始まりだったわけです。
さて、尊い方々の風習は真似したくなるのが人の常。貴族から武士、庶民へと文化の波が広がるごとに少しずつ変化や簡略化が進んでいきます。
年始の挨拶の風習は「年始回り」と新たな名前を得て、大正時代頃まで一般に広く行われました。
お世話になった人や親族の家をまわって挨拶する人の群れで往来が混雑するほどだったとか。
しかしながら、
「年始回り」で知り合いのお宅へ伺っても、家主がいるとは限りません。
その人も「年始回り」で不在にしている可能性があるわけです。
そんなときは
玄関にある「名刺受け」にお祝いの言葉を書いた名刺を入れて、「年始の挨拶」の代わりとしました。
自分で自分の年賀状を、直接相手方のポストに入れているようなものですね。
また、「年始回り」が近所だけで済めばよいですが、交通網の発達などから時代を経るごとに人付き合いの輪は広がります。
とてもじゃないが足を伸ばせないほど遠くに住んでいる人もいるわけで、そういった人には
書状で年始の挨拶を済ますのが通例となっていました。
飛脚を使った年始の挨拶状。まさに年賀状ですね。
■年賀状の大流行
年賀状を出すことが急速に一般化したのは明治4年(1871年)の郵便制度の開始がきっかけです。
2年後の明治6年(1973年)に郵便はがきの発行が始まり、安価に郵便を出すことができるようになりました。
これに目をつけたのが当時の上流階級や知識層の方々。
はがきは他人に内容を見られる可能性があることはデメリットですが、年始の挨拶状は「謹賀新年」などの賀詞と名前だけでも十分事足りるものです。
封書で送っていた「年始の挨拶状」を、記入スペースの限られた安価な「はがき」で送るようになります。
こうして、はがきの年賀状は徐々に一般にも広がり、明治20年(1887年)頃には年中行事の一つとして身近なものになっていきました。
さて、当時の郵便物は手紙を受け付けた郵便局と、実際に配達をする郵便局とで消印が2つ押されるものでした。
年の始めの挨拶状。
せっかく受け取るなら消印は「1月1日」のものが良いに決まっています。
その結果、受付局か配達局の「1月1日」の消印を狙って、多くの人が年末と元日に郵便局に押しかけるようになりました。
郵便局員は文字通り不眠不休で消印作業にあたり、押印担当者の手は豆で腫れ上がるほどだったとか。
あまりの事態に、明治32年(1899年)には指定局での「年賀郵便」の特別取扱が始まりました。
12月20日~30日の間に指定の郵便局に年賀状を持ち込めば、「1月1日」の消印で新年に配達が行われるというサービスです。
この措置がうまくいったのでしょう。
干支が半周した6年後の明治38年(1905年)には全国すべての郵便局で「年賀郵便」のサービスを受けられるようになり、明治40年(1907年)からははがきの表に「年賀」という表記があればポスト投函でも「1月1日」の消印がもらえることになりました。
■お年玉付年賀はがき
その後、日中戦争や太平洋戦争によるあらゆる物資不足や自粛ムードから、年賀状は一度日本の歴史から消え去ります。
年賀状の特別取扱が復活するのは昭和23年(1948年)のこと。
この年の年賀状の数は戦前のピークの半分にも満たないものでしたが、翌年の昭和24年(1949年)にはとある画期的なアイディアで日本中に年賀状が飛び交うことになります。
「お年玉くじ付き年賀はがき」が販売されたのです。
この
「お年玉くじ付き」というアイディアは実は民間人から提案されたもの。
「年賀状が戦前のように復活すれば、お互いの消息もわかり、うちひしがれた気分から立ち直るきっかけともなる」という思いが込められていました。
特賞:ミシン、1等:純毛洋服地、2等:学童用グローブ、3等:学童用こうもり傘、4等:葉書入れ小箱、5等:便箋封筒組合せ、6等:記念切手といったラインナップ。
子供用の賞品が多いのはベビーブームという世相が反映されたのでしょう。
「お年玉くじ付き年賀はがき」は大ヒットし、日本は再び活気付きました。
こうして年賀状の歴史を見ていくと、年賀状は送る相手への感謝だけでなく「私は元気でやっています」という自分の安否報告の意味合いもあることがわかります。
顔を合わせての挨拶から、書状での挨拶へ。人との関わりや、人付き合いの輪の広さが変わるごとに変化していった年始の挨拶。
身近な人にはもちろん、なかなか会えない人へ、「お変わりありませんか。私は元気でやっていますよ。」という気軽な気持ちで、今年の年賀状を送ってみませんか。
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